薄利が続く中国企業と倒産

2018年9月、中国で与信管理セミナーの講師を行う為に北京を訪れた際、日系金融機関の現地トップとお会いする機会があった。

 

日本でもようやく普及率が高まって来たキャッシュレス決済や、自転車・バイクのシェアライドであるが、当時の中国ではすでに爆発的に普及しており、新たなインフラ導入への積極性が垣間見れた最中であった。

 

その金融機関のトップは「計画経済の中では、民間のみならず当局までが資金を投入して、新たな技術を実現させようとする企業を支援する。

そうすると、色々な会社がその業界に参入して乱立し、競争の中で技術導入が進むが、最終的には整理の過程の中で一、二社に絞りこまれていくことになる。」と仰っていた。

 

比較的新しい事業分野でいえば太陽光パネルがそれに当たり、旧来からの産業だとピアノ業界がそれに当たる。

どちらも当局主導の整理や政策の過程で、業界特有の倒産続発を誘発しており、日系金融機関トップの発言が思い出されるのだ。

 

中国の倒産法については、次回の記事でまとめてみたいと思うが、太陽光パネル製造企業である浙江爱康光电科技の破産(破産重整という法的再建手続き)は、象徴的であった。

 

上述の例に漏れず、この業界もプレイヤーは多く、販売価格を引き下げて競合せざるを得ない状況が続いている。

クレディセイフ企業情報が提供している「中国決算書レポート」から分析すると、2022年期に当期損益が大きくプラスになった企業は限られ、2023年期には赤字に転落している会社が増加している。

 

価格競争への対処に苦労していると読んで間違いない。そうした国内での競争環境によって鍛えられた廉価な製品を、そのままの金額で輸出をして輸入側の国の同業他社が淘汰されているという議論もあるが、ここでは深堀しない。

 

日本においても、リーマンショック後に飛ぶ鳥を落とす勢いであったマンションデベロッパーの倒産が続発するなど、業界特有の倒産傾向が色濃くなった事例はある。

 

ただし、中国の企業倒産は計画経済の中における政策やそれによる競合環境によって誘発される場合もあり、日本のように個別個社の動向だけを注視するという視点のみでは、与信判断が難しい事を頭の片隅においておくべきであろう。

 

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