【開催報告】経済萎縮に負けない非常時の与信管理フォーラム

@コングレスクエア日本橋・Zoomウェビナー

2020年9月11日にコングレスクエア日本橋において、「経済萎縮に負けない非常時の与信管理フォーラム」を開催しました。

年初には遠い対岸で起こっている事のように感じていた新型コロナウイルス感染症は、瞬く間に日本全国に影響、3月末に東京オリンピックの正式延期が決定した後には多くの企業がテレワークや時間差出勤を実施し、三密を避ける状況となりました。私たちの生活様式は様変わりし、新しい働き方が模索されています。

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そのような中、企業取引においても新たな考え方が必要にならざるを得ないと考え、国内外の与信管理について集中的に学べる機会をと、本フォーラムを準備しました。

急遽の企画にもわらず、会場・オンライン参加で合わせて500名以上の申込があり、当日は弊社代表の牧野、CSOの中村を含む5名のスピーカーにコロナ禍における与信管理についてお話をいただきました。どのスピーカー様も「このような状況下だからこそ基本を忠実に」という強いメッセージを秘められていましたが、そこにたどり着くまでの道筋は三者三様。以下、当日の様子やお話した内容の一部をご紹介します。

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1. コロナ禍による世界経済の収縮が海外取引先に与える影響と日本企業の対応策

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株式会社クレディセイフ企業情報

代表取締役/与信管理コンサルタント

牧野 和彦

支払条件や取引サイトなど、細かな部分から足固めを

コロナ禍による世界経済の影響​に目を向けると、主要11カ国の2020年4~6月期のGDP前年同期比9.1%減少、スペインを筆頭とし、各国でGDPが減少している。企業に対する影響​では、主要企業1万社において25%が2020年4~6月期売上3割以上減収​。業種別では、空運、外食、自動車、アパレルにおいて顕著​な傾向がある。地域別では、南米や欧州における影響が大きく、中国やアジアは比較的軽傷​であった。中小企業の倒産は4%から12%である。

世界の倒産事情をみると主な倒産は小売関係で、主要国を中心に増えている。アパレル主なところでいくと英国・ローラアシュレイやジェイシーペニー等も破産申請をした。コロナ禍前後で需要の変化があり、収束を見通せない今人々の動きもどんどん変化している。需要の増加をしていくものとしては、医薬関係、在宅用IT機器、テレワークが拡がったことで関連のある宅配事業等である。減少していくものとしては、イベント関連、大人数での宴会等クラスターを懸念したものになる。

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日本企業の対応策​としては、まず与信管理体制の強化をすること。たとえば弊社モニタリング機能等(取引先を登録しておくことで、変動情報があった際にメール通知をする)を活用し取引先の動向を把握や、ファクタリング等を活用し債権保全策の実施をする。支払条件やサイトの変更をしていく必要性もあり。与信限度額の見直しをする。コロナ渦の最中にあり、先が見通せない中で今までやってきたことの見直しや体制の強化をして条件を厳しくする等、細かいところから足固めをしていくことが求められていく。

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2. コロナ禍を乗り切るためにやっておきたい与信管理

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株式会社セガグループ

コーポレート本部 グループ支援部与信管理チーム チームマネージャー

牟田園 申二氏

有事では与信管理体制に加え「支援という考え方を持つこと」が重要

過去に発生した阪神淡路大震災(1995)・東日本大震災(2011)では、取引先に対して売掛金の棚上げや手形ジャンプに応じるなど、「人道的に対応する」ことを学んだ。バブルの清算(1997~8)・リーマンショック(2008)では信用調査会社の調査能力を駆使して、背負えるリスクの範囲内であれば会社の適正なプロセスに則って「意思決定の支援」をすることが大切だと学んだ。状況に応じて、それ以前の与信管理体制に加えて「支援という考え方を持つこと」が大事である。

コロナ禍において営業パーソンへアドバイスしたのは「現預金が何日分保有されているか」​、「借入依存度」のほか​、私的整理中や返済猶予を受け再建中か​を確認し一旦市場を把握すること。平時から根気強く企業モニタリングと格付けを行っていたことで、有事でもリスクに向き合う余裕ができていた。これにより厳しくなる可能性が高い取引先をあらかじめ選別し、どうすべきかを短い期間で方針付けることができた。ただし第二波に対しては充分に注視する必要がある。

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現時点では、政府・民間が出す資金支援策が功を奏していることから、急激に倒産が増える可能性は少ないと考える。​我々与信管理者が悩むべきは、その先に見えていない、「潜在リスクの存在」。​いまのうちに、与信管理の基本的な業務をしっかりと社内に定着させることが大事であり、​営業パーソン(とくに若手)の与信スキルの醸成が急務になってくるだろう。​

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3. 韓国における、企業経営環境の今後・倒産の見込み及び企業調査の留意点

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NICE Information Service Co.,Ltd.*

Assistant Manager / BI evaluation business Dept. / BI sector

Hanyeong Kim 氏

*韓国最大の信用調査機関で、500名以上の従業員が在籍。企業だけではなく消費者の信用調査も行う。

 

金融機関の貸付状況から2020年9月からは倒産状況も変化するだろう

韓国では、COVID-19の影響による倒産は減少傾向にあり、その背景には資金の供給、特に金融機関からの貸付が影響しているといえる。しかし長期にわたって継続性があるものではなく、2020年9月以降は倒産状況も変わってくるだろう。そのため継続的なモニタリングは必須であり、信用情報をうまく活用することが重要になってくる。

韓国の企業信用情報の出所について 上場会社であれば、法的機関から登記に絡む情報や決算書などを取得している。未上場会社は金融機関や当該企業そのものからしか情報を取得出来ないが、NICEは韓国最大の信用調査会社として情報ゲートウェイ機能を有しているので、金融機関が格付けや分析をしない分、NICEに直接未上場会社から情報の開示をしてもらい、分析をすることでその企業や金融機関に使ってもらう制度を整えているため、情報が集まってくる。韓国にはNICEを含め4つの認可された個人信用情報機関が存在する。

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クレディセイフを通じてNICEの保有する企業データベースに直接アクセスができる。韓国の信用調査ではライセンスを持っている機関とどのように良い関係を構築していくかが重要であるが、NICEは圧倒的な情報収集力を持っている。情報は随時更新されている。リスク判断のプロセスは情報収集をし、モニタリングで観察した上で気になる点は詳細情報の調査。95%以上の韓国の金融機関がNICEの定めるスコアに基づいて与信を行っている。

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4. 中国企業の信用調査と、四囲環境の変化

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株式会社クレディセイフ企業情報

Chief Strategy Officer

中村 裕幸

規制強化により限定的な情報で与信判断するケース増。より確かな情報ソースを

中国は年間100万社以上が倒産すると云われている。日本は8,000社から1万社のため約100倍である。中国事業は日本企業にとって非常に重要になった、厳しい状況に置かれても取引を継続させていかなければならない。

 

日本の倒産と中国の倒産は少し違った考え方や定義がある。再建型の倒産は日本でいうところの民事再生法や会社法制法で、会社事業そのものは継続をさせていきながら、中長期的な視点で債権者に返して返済を進めていくというのが、再建型の倒産プロセス。一方、倒産法の大方は清算型の倒産にフォーカスが充てられている清算型は主に破産を指し事業そのものは終えて持っている資産等々を、従業員をはじめ取引先や債務者に返済をしていく。倒産法はあるが法的な手続きの難しさもあってか、申請が進まず夜逃げが主体であった。そのため倒産集計の数字では2000件足らずに留まっているが、営業期限までに登記更新を行わない​企業や、年次報告の義務を履行しない企業が​登記抹消によって倒産と解釈されてきたため実際には100万件を超える倒産があり、不良債権を抱えるリスクがあがるということだ。

 

近年アメリカは中国に対して厳しい制裁を行っている状況。本年8月14日に報じられたNDAA(国防権限法)の改正は非常に大きな衝撃である。中国大手企業5社との取引を禁止するという制裁で、またこれら5社と取引関係にある企業とも取引を禁止するという内容。

 

中国は情報の開示規制が強化されつつあり、決算書自体が取りにくい状況。まずはインターネットでチェックし、会計データベースから取引先の資金的状況を調べる。さらには登記情報から訴訟事に巻き込まれていないか、資金調達先等を確認する。最終的に現地の状況はどうなっているのかを確認する。外出自粛規制のある中で現地に確認にいくことができないいま、私共のほうで詳細なデータを取得し、弊社がお手伝いをさせていただく。

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5. コロナ禍における与信管理~その変わらぬ視点

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マリックス株式会社

大阪業務部長

葉山 真一氏

緊急時においても与信先は平常時と変わらぬ大切な取引先である

最初に1989年から2019年の過去30年を以下3つのステージに分解し、与信管理の局面で重要であった出来事とともに解説。

  1. 1989~1998年 バブル崩壊と金融危機
  2. 1999~2008年 不良債権処理とリーマンショック
  3. 2009~2018年 中小企業金融円滑化法と倒産件数減

そのようななかで、このコロナ禍で明らかになりつつある経済・ビジネス環境のトレンド​は次の3つ(講演では項目ごとに細かく解説をした)。

  1. 「集積の不経済」の発生​(3密で成長してきた経済が3密を避けなければならないパラドックス​)
  2. 「現場固有の情報・知識の重要性」の再認識​(マニュアル依存の限界、個別精査の重要性)
  3. 「冗長さ(ムダ)」の見直し(効率一辺倒の経営姿勢の軌道修正)

与信の可否判断においては、まず「手元流動性」・「安全性」の視点に重点を置いて検討すること。このような状況であるからこそ​経営トップと直接面談をして判断する。​財務諸表や信用調査報告書の限界を認識したうえ現場で得られる情報を重視するなど、紙で得られる情報ももちろん大事であるが、それ以上に実際に生で得られる情報をしっかり収集することの大切さが​求められる。​

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また与信先の動向観察および緊急事態において留意すべきこととして、担保(保証・保険)は信用を創造しないこと、モラル・ハザード発生のリスクに十分留意すること、緊急時においても与信先(債務者)は平常時と変わらぬ大切な取引先であることなど。一つひとつのプロセスに対してリスク度を確認・判断していく与信管理において、緊急時の判断で優柔不断は禁物である​。

 

以上のように、与信管理の現場の声、また情報提供側である信用調査会社から最新の情報を聴講者の方々に共有させて頂きました。聴講者からは「全取引先に対してどのように決算書公開を促すのか」といった実務的な課題や、中国企業の情報が取れにくいのであれば貿易保険に丸投げした方がよいのではないかといった解決策が提言されるなど、登壇者との間で積極的なコミュニケーションが行われました。

当日の資料や内容の詳細につきましては、ぜひ営業担当にお問合せください。

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