「今後10年から20年の間で約半数の仕事がAIやロボットに取って代わられる」というオックスフォード大学の「雇用の未来」という論文の発表は記憶に新しいところです。
原文:The Future of Employment (Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne)
それから少しもたたないうちに、RPA(Robotic Process Automation)という技術で複雑な事務処理をロボットが自動で行うことができるようになり、導入したメガバンクが大規模な人員削減に踏み切りました。
ほんの数年前までは、銀行に就職すれば一生安泰だと云われていましたが一転、先行きに不安が生じています。
「雇用の未来」で述べられていたように、今後10年以内に銀行の審査担当者の業務がAIを搭載したスコアリングモデルに代替される確率は98%と云われています。
果たして、銀行の審査から人の手は消えてしまうのでしょうか。
ビッグデータ分析やAI技術の活用により、いまやスコアリングモデルは、ベテラン審査マンの経験や勘が必要とされる定性情報の分析もスコアリングモデルで数値化できるようになりました。
例えば、経営者の能力といった数値化しづらい要素を最新のスコアリングモデルでは、業歴で評価をすることができます。
起業後3年以内に70%の企業が倒産すると言われている中で、長年存続している企業は、例え資本金や売上げが低くとも着実に取引先の信頼を勝ち取り商売を続けているという点で、経営者に一定の能力があると判断することができます。
業歴は比較的簡単に入手できる情報な上、粉飾がしにくいということもスコアリングモデルでの評価に適しているといえます。
また、景気変動も倒産確率に大きな影響を与える定性的情報です。
サブプライムローン問題に端を発したリーマンショックにより、2008年には倒産件数が増加し、特に体力の無い中小企業の倒産が急増しました。
この景気変動も、短期金利・長期金利・為替レート・銀行の貸出残高、株価インデックスといったマクロ経済要因を考慮することで、スコアリングモデルの精度を維持することができるようになりました。
このように技術の発展が確実に人間の仕事を減らしていく中で忘れてならないのは、本来、AIは人間の仕事を手助けするために開発されてきたということです。
AI技術の発展とともに、チェスや囲碁などのボードゲームの世界では、さかんに人間対AIという構図で対決を行い、名人がAIに負けたことが取り沙汰されていますが、AIに仕事を取られてしまうことを危惧するのではなく、AIにできなくて、人間にできることに目を向けていく必要があります。
銀行の業務に置き換えると、審査の難易度に応じて、分業をすること。
簡単な審査は、AIに任せ、高度な審査はこれまで通り人間が行うといったように臨機応変に対応することがカギになるのかもしれません。
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