一般企業にとって、与信管理は会社全体における業務の一つという位置付けですが、金融機関では与信管理こそが主な業務となります。
金融機関は、不良債権が発生する確率の低いより安全性の高い企業に、どれだけ多く貸し出すことができるかが重要ですが、安全性の高い企業はどこの金融機関も取引をしたいと考えるため競争率も高く、絶対数も少ないため、事業規模を拡大していくためには中小企業への融資にも目を向ける必要があります。
しかし、中小企業への融資には様々な課題が存在しています。
金融機関の立場から、中小企業への融資を考えてみましょう。
中小企業向け融資の課題は、収益性の低さにあります。
融資金額が小さく、1件あたりの収入単価が低いことや信用リスクが高く審査に手間がかかることが採算性を悪化させています。
また、後継者不足による廃業、若者の起業離れにより企業数自体が減っていることや、クラウドファンディングやソーシャルレンディングといった資金調達方法が活発になってきたことも影響し、金融機関同士の競争が激化しているため、金融機関の貸出金利も軒並み下がっています。
そのため、できる限り審査の手間を減らし、コストを下げることで利益を確保する必要があります。
そこで登場したのが、スコアリングモデルを活用した事業融資(スコアリング融資)です。
スコアリングモデルは、貸出先の信用力を、統計的手法を用いて算出・格付けする仕組みのことで、割賦販売利用者の審査のために米国で初めて開発されました。
これまでクレジットカード業界に始まり、消費者ローン、住宅ローンと様々な審査の場で活用されています。
このスコアリングモデルを審査に活用することで、定量的な情報を瞬時に処理することができ、審査の効率化を図ることができます。
また、いままでリスクが高いと判断し融資を見送っていた先にもリスクに応じた金利を設定することで融資可能となるため、2000年代前半には金融機関が次々とこのモデルを導入して中小企業への事業融資を行いました。
しかし、2000年代後半にこの融資による多額の損失が明らかになり、徐々に事業融資における審査の場面から姿を消すことになりました。
一方で、住宅ローンや消費者ローンでは、スコアリングモデルの活用は定着しつつあります。
それではなぜスコアリング融資だけが失敗してしまったのでしょうか。次の章で原因を解説します。
記事はお役に立ちましたか?シェアいただけたら嬉しいです!