Filling of Claims(債権登録)の重要性
債務者が法的整理を申請した場合に忘れてはいけないのが債権登録である。
通常、裁判所から送付される債務者の破産通知には、債務者が債権者に対して有する債務額がすでに記載されている。
その金額に間違いがなければ債権登録をする必要はない。
しかし、たとえ少額でも差異があれば、関連書類ー式(注文書、請求書、受領書、通信文等)と共に債権を裁判所に登録しておくべきである。
債権の一部が担保債権の場合は、無担保債権の分だけ登録する。担保債権の関連書類も同封しておくとよい。
海外の債権者はリストからもれる可能性があり、債権登録に関する書類が送付されてこないことがある。
あるいは単純に債務者や裁判所のミスにより裁判所から通知が送られてこないこともある。
その場合でも、債務者や管財人に連絡を取り債権登録の手続を取るように要請する。
なお、債権登録に関する書類が送付されてこなくても、破産管財人側で債権登録を行っている場合もある。
例えば、米国の倒産手続は情報公開が徹底されているので、米裁判所が運営するPACER(Public Access to Court Electronic Records)というウェブサイトでも債務者の法的整理に関する情報が確認できる。
事前に登録が必要で情報取得に応じた費用もかかる。Unsecured Creditor(無担保債権者)の場合、配当はほとんど期待できないが、債権登録していなければ、そのわずかな配当を得ることすらできない。
国により異なるが、債権登録の手続はいたって簡単である。
公正証書にする必要もなく、債権額の合計を記載し責任者が署名をして、関連書類ー式を添付して送り返せばよいだけである。
では、管財人より何の通知もなく債務者の倒産も知らずに、気づいたら債権登録の期限を過ぎていた場合はどうなるのか。
経験上で申し上げれば、登録する権利があることを主張すれば通ることもある。
これはあくまで債権登録手続に不備があった債務者や管財人の責任なので、こちらの権利を主張すべきである。
債権登録が済めば後は、破産手続や再建手続の動向をモニタリングし 、必要に応じた対応を取ればよい。
国や債権額によるが、実務上行うことはほとんどない。
大口債権者で、再建計画に影響力があるようであれば、債権者集会に出席したり、再建計画を評価したりする作業も生じるが、そのために海外に出向くのは費用と時間がかかるので、弁護士を代理人に選任し一任することもできる。
※出典:「海外取引の与信管理と債権回収」(牧野和彦著、税務経理協会刊)