意識しておくべき国としての支払能力
貿易を行う上で取引先の信用度と同じ、あるいはそれ以上に重要なのが、取引先が存在する国のカントリーリスクである。
カントリーリスクといっても様々なリスクが存在するが、貿易を行う上で重要なのは、次の3点である。
- 戦争や紛争などが勃発するリスク
- 国家として債務不履行に陥るリスク
- 外貨管理上の制限で取引先が送金できないリスク
大手商社や銀行では、こうしたリスクを自社や系列の研究所で分析しているが、一般の事業会社には、そこまで人員を避ける余裕はない。
日本貿易保険の保険の引き受けの基準となる国別のカテゴリーを参考にしている企業は多い。
OECDカントリーリスク専門家会合において、国毎の債務支払い状況、経済、金融情勢等を議論し、それぞれの評価が決定している。
日本貿易保険は、このOECDの評価を基に、国、地域のカテゴリーを決めている。
A~Hまで8段階のカテゴリーになっており、もっとリスクの低いのがA、高いのがHとなっている。
GやHになると、引き受けできない国や地域も多い。
例えば、今、話題のミャンマーはHである。引受停止ではないが、条件付きで引き受けできる。
しかし、L/C条件が付いており、輸出の場合、L/C取引でなければ保険が付保できない。
貿易保険は、実質的に国が民間企業の海外展開をサポートするための保険という位置づけであるから、カントリーリスクの高い国でも政策的に保険を引き受ける場合もあるだろう。
そう考えると、民間企業としては、株式会社日本貿易保険(NEXI)の評価をそのまま採用するのではなく、多少厳しく評価する必要がある。
※出典: ナレッジマネジメントジャパン株式会社 ウェブサイト(牧野和彦著)