多様化するコレクション・エージェンシーのサービス
現在、米国の債権回収業界では吸収合併の大きな流れが起こっている。
各業界の顧客も吸収合併して超巨大企業が次々と誕生する中 、債権回収業界も例外ではない。
そうした巨大化した顧客の多様化、複雑化するニーズに応えるために戦略の集中や転換が必要になってきているのだ。
多様化のキーワードの一つは高付加価値である。
今までは成功報酬ベースでの回収代行が主流だったが、ここ数年では、回収の結果に関わらず一律の月額契約式の債権管理、回収サービスが増えてきた。
また、企業が売掛管理の業務を丸ごとコレクション・エージェンシーにアウトソーシングするという契約形態も出てきている。
法的手続に関する各種のサービスも高付加価値路線の一種で、弁護士の紹介はもちろん、債権登録の代行や債務者の資産調査まである。
与信管理のコンサルティングやトレーニングも高付加価値化の一つと考えられるし、最近では、M&Aや債権のバルクセールに必要な債権や不良債権の評価を行うPortfolio Managementというサービスも行っている。
(1)サービスの総合化
また、各社は、与信管理・債権回収に関するトータルソリューションの提供を目指しており、そのサービスには横の広がりが見られる。
遅延債権は全債権の比率から見ればわずかで、正常な債権の比率が圧倒的に多く、この正常債権に対する各種のサービスが増える傾向にある。
例えば、売掛確認通知書と呼ばれる支払日の確認書を支払日が近づいた顧客に送るサービスなどである。
あるいは、契約自体の管理や分割払いを約束した顧客の分割払いのモニタリングもある。
日本でも見られるように、請求書や入金の管理といった経理業務の代行をしている会社も多い。
面白いところでは、封筒や督促状のテザインを請け負うサービスまである。債務者の注意を引く色やデザインに関するノウハウがあるわけだ。
また、米国ではコレクション・エージェンシーもアンケートや顧客満足度調査など一般のテレマーケティング会社と同じような業務を行っている。
さらには、コールセンターの構築に関するコンサルティングや社内の債権回収部門の構築、バックオフィス業務の運営に関するアドバイザリーサービスまでも行っているコレクション・エージェンシーもある。
また債権回収ではないが、情報サービスとして過去の支払延滞者や不正者に関する情報が照会できるサービスも一般的だ。
(2)サービスの専門化
専門化は総合化の流れと相反するようだが、総合化するコレクション・エージェンシーがある一方で、さらに専門性を高めていくコレクション・エージェンシー社もある。
コレクション・エージェンシーは元来、個人向けの債権回収と法人向けの債権回収に分かれる傾向があったが、そうした専門性がさらに細分化されてきた。
例えば、病院の診療費の回収に特化したコレクション・エージェンシーのように業界に特化するパターンと、訪問だけによって回収するコレクション・エージェンシーなど、サービス自体に特化するパターンの両方がある。
こうした流れは、早晩日本でも訪れるであろう。正確にいえば、多様化したサービスの一つ一つは、すでに日本でも存在するものがある。
例えば、経理業務の代行やテレマーケティング、コールセンターの構築、与信管理に関するコンサルティングなどがそれに当たる。
欧米の市場もまだ成熟産業ではなく、サービサーが解禁されて10年程度の日本のマーケットは規制も多く、市場規模も成長率も欧米の比ではない。