※出典:「海外取引でよく使われる与信管理の英語」(牧野和彦著、IBCパブリッシング刊)
日本語でクレームというと、苦情や文句を指す。これは和製英語で、英語の意味は債権、請求権、主張のこと。日本語のクレームに相当する英語は、complainである。クレーマーも和製英語で、claimerという英語はない。クレーム客という意味で、complaining customerが使われる。How to handle customer complaintsといえば「顧客からのクレームへの対応法」になる。
demand letter(督促状)は支払いを督促する書面の総称で、比較的、支払遅延が長期化した段階で出されることが多い。
これに対して、初期の遅延段階で送られるのが、reminder(リマインダー)である。reminderとは、動詞のremind(思い出させる)から来ており、支払いを思い出せるための通知である。日本では、「未入金の通知(お知らせ)」といった表現がよく使われる。
弁護士やcollection agencyの報酬は、成功報酬制が多い。世界にはcollection agencyが2万社以上あるといわれている。そのため競争も激しい。"No Collect, No Pay"(回収できなければ無料)のキャッチフレーズを掲げていることも多い。
仲裁とは、Alternative Dispute Resolution / ADR(裁判外紛争処理)の一種で、当事者の合意に基づき、裁判ではなく、第三者であるarbitrator(仲裁人)の判断で紛争を解決すること。仲裁で出された仲裁判断には、裁判による確定判決とほぼ同じ効果がある。
コレクションやコレクターというと、稀少品の収集、収集家を思い浮かべるかもしれない。しかしビジネス、とりわけ財務関連においてcollectionといえば、債権回収を指すことが多い。また与信管理から債権回収までの業務全般をcredit and collectionという。
法規制の観点から日本では債権回収をビジネスにできないが、これは世界的に見れば少数派である。多くの国では許可や登録を行うことで、債権回収ビジネスとして行うことができる。
債権者やその子会社などによる回収をfirst party collection(債権者による回収)と呼ぶ。大手企業はコスト削減のために債権回収機能を外部化して、子会社や関連会社にしていることが多い。
automatic stay(自動停止)は、米連邦倒産法の大きな特徴の一つで、Chapter 7(米連邦倒産法第7章)やChapter 11(米連邦倒産法第11章)などの倒産の申し立てが裁判所に受理された瞬間から開始される。
bankruptcy(倒産)とinsolvency(支払不能)は、混同されて使用されていることが多い。これは各国の倒産法や用語の違いに由来されるが、実際には同義語として使われることも頻繁にある。
Chapter 7(米連邦倒産法第7章)では、会社をliquidation(清算)するのに対して、Chapter 11(米連邦倒産法第11章)では、reorganization(再生)することが前提となる。
日本で和議法が民事再生法に改正されたとき、米国のChapter 11(米連邦倒産法第11章)を参考にしたといわれる。その代表的なものが、debtor in possession / DIP(占有債務者)の制度である。DIPは、trustee(管財人)と同じような権限を持ち、再建を主導する。例えば、財産の管理、債権の調査、裁判所への報告、税務申告などである。
administration(会社管理手続)は、英国における再生型の法的整理である。会社管理手続が開始されると、administrator(管理人)が選任される。この管理人は、insolvency practitioner(倒産実務家)と呼ばれる資格を有するsolicitor(弁護士)やchartered certified accountant(勅許公認会計士)である。
一言でbankruptcy(倒産)といってもいろいろある。夜逃げや行方不明などの私的整理と、裁判所が介在する法的整理に分かれる。米国の法的整理では、liquidation(清算型)のChapter7、reorganization(再建型)のChapter11、Chapter13の3種類が代表的な手続きになる。
creditors' committee(債権者委員会)はU.S. Bankruptcy Low(米連邦倒産法)の特徴的な存在で、Chapter 7(米連邦倒産法第7章)の手続きにおいて重要な役割を担う。U.S. trustee(連邦財務官)は、無担保債権者の中から、債権額の大きい順番に7名のcreditors' committeeを選任する。
債権者はbar date(締切日)と呼ばれる期日までにproof of claim(債権証明)を裁判所にfile(提出する)必要がある。債権届出を行わないと、distribution(配当)を受けることができなくなる。債権証明には債務者名、債権者名、住所、債権額、担保の有無などを記載する。
Company Voluntary Arrangement(会社任意整理)は、英国の債権型の倒産手続きである。法的整理でありin court(裁判所内)で行うものと、out of court(裁判所外)で行うものがある。手続きの簡潔さから裁判所外が多く活用される。
liquidationは、英国、香港、シンガポールにおいて破産を意味し、winding-upともいう。債権者や投資家から強制的に破産させるcompulsory liquidation / involuntary liquidation(強制破産)がある。
garnishment(差押え)と似た表現にattachment(差押え)がある。債務者の財産が第三者の管理下にある場合の手続きをgarnishment、債務者の管理下にある財産に対して行う手続きをattachmentと呼ぶ。
債権者がsecurity interest(担保権)を実行することをrepossessionという。金融機関の多くはrepossession agent(差押え代行業者)と呼ばれる専門業者に依頼する。米国では州によって法律は異なるが、ほとんどの州で担保権者が債務不履行時に担保権を実行することを認めている。つまり、裁判所の手続きを経ることなく担保権を実行することができる。
不動産に対する差押えをforeclosureという。競売は、foreclosure saleという。日本では対象となる財産にかかわらず差押えと表現されるが、米国では対象となる財産や状態によって、いくつかの言葉が存在する。日本語に訳すと全て差押えとなってしまうが、正確には法制度が異なるので用語が違うということである。
bankruptcy(倒産)とinsolvency(支払不能)はよく混同されている。米国においては、前者が法的な意味での倒産であるのに対して、後者は財務的な意味合いを持つ。
offset(相殺)は債権回収の手法の一つである。代表例は銀行の融資で、銀行が企業に融資している場合、その企業が同じ銀行に定期預金があれば、延滞が発生した場合、預金を相殺することで回収を図る。これを強制的に企業に強いることは禁じられているが、任意であれば問題ない。
statute of limitations(出訴期間)とは、英米における法律手続きを提起できる期間であり、日本の法律における時効に相当するものと考えればいい。ただし、日本は西欧州などで採用されているcivil law(大陸法、民法)であるのに対して、英米はcommon law(英米法、慣習法)というように、法律体系が異なるために全く同じものではない。
日本でも自宅にかかってくるセールスや勧誘電話は歓迎されない。米国ではそれを2003年に立法化、National Do Not Call Registry(全米電話禁止リスト)に掲載された電話にunsolicited call(未承諾の電話)を規制した。違反すると、500~1500ドル/1回の電話とかなり高額な罰金が科せられる。
FDCPA(公正債権回収行為法)では、third party(第三者)として債権を回収する人間や団体を規制している。こうした人間や団体をdebt collector(債権回収者)と呼んでおり、collection agency(債権回収代行会社)はもちろんのこと、回収を担当するattorney(弁護士)や、債権を購入して回収する会社も含まれる。日本でも貸金業法で同様の債権回収に関する規制がある。
Telephone Consumer Protection Act / TCPA(電話消費者保護法)では、telemarketer(テレマーケティング会社)およびseller(販売者)など、テレマーケティングを業務として行う事業者が対象になる。しかし債権回収の電話も、unsolicited call(未承諾電話)として該当するケースもあり、関連する訴訟も増加傾向にある。
※出典:「海外取引でよく使われる与信管理の英語」(牧野和彦著、IBCパブリッシング刊)
海外取引における与信管理や債権回収業務に頻出する英単語の意味を、その背景にある海外の商習慣や法規制にも触れながら解説しています。
海外取引へのさらなる理解にお役立てください。
目次
1ヶ月に二度、与信管理に関するノウハウや国内外の商取引をスムーズにするための業界情報を発信いたします。
・プロによる海外取引の重要ポイント解説
・国内企業の信用調査からみえる気付き
・世界情勢のいま(国ごとに解説)
・無料セミナーのご案内