※出典:「海外取引でよく使われる与信管理の英語」(牧野和彦著、IBCパブリッシング刊)
credit application(与信取引申請書)とは、金融機関においては融資申込書であり、一般の事業会社では売掛での取引を認めるための書類である。後者の場合、日本では社内稟議書であることが多い。つまり社内で営業担当者が記載することになる。一方、欧米では一般の事業会社でも顧客に記入させることが多い。
欧米企業のcredit manager(与信管理部長)の役割は幅広い。credit decision(与信判断)から、setting credit limit(与信限度の設定)、monitoring accounts receivable(売掛金のモニタリング)、obtain security interests(担保権の取得)、collection(債権回収)まで行う。
trade referenceは欧米独特の商習慣である。新しく取引をしようとする相手方が、きちんとお金を支払ってくれるかどうかを判断する貴重な情報源となっている。日本でも、同業者同士でこうした信用情報の交換は行われている。しかし、情報を交換する者同士は、互いを知っていたり、顔見知りであったりすることが多い。これに対して、trade referenceでは、面識のない企業の担当者同士が情報を交換する点が大きな違いである。
与信限度額とは、金融機関においては融資の限度額を指す。一般の事業会社では、売掛での取引の限度額を指す。1回の売掛取引の上限額ではなく、未回収金額の上限となる。maximum creditやcredit lineとも呼ばれる。
与信管理には矛盾した二つの目的がある。売上を上げることと、不良債権を削減することである。一見相反する目的だが、仮にどちらか一方の目的だけである場合、与信管理は不要になる。
five Cs of credit(信用の5C)は、credit(信用)の頭文字であるcと各単語の頭文字をそろえた一種の語呂合わせである。ここから派生して、6Cや4Cもある。5Cとは、character(人間性)、capacity(支払能力)、capital(資本力)、collateral(担保力)、conditions(条件)である。
credit policyは、直訳すると与信方針となる。しかし、日本では一般的に、与信規定、与信管理規定、与信管理規程などと呼ばれている。名称は違えど、与信管理に関する社内規定であることに変わりはない。
Pareto principle(パレートの法則)は、80-20 rule(80:20の法則)とも呼ばれている。イタリアの経済学者、Vilfredo Pareto(ビルフレッド・パレート)が1906年に、イタリアの土地の80%は、20%の富裕層が保有していることを発見した。いわゆる、富の偏在である。
current assets(流動資産)は、1年以内に支払期限が到来する負債に対して、1年以内に現金化できる可能性が高い資産をどの程度保有しているかを見る指標である。
<計算式>
current assets(流動資産)/ current liabilities(流動負債)= current ratio(流動比率)
企業の与信管理の効率性を判断する代表的な指標。財務分析では、efficiency(効率性)を判断する指標としても使われる。collection period、days receivableともいう。
<計算式>
accounts receivable(売掛金)/ sales(売上)×365=days sales outstanding(売掛金回収日数)
inventory(棚卸資産)には、raw materials(原材料)、work in process(仕掛品)products(製品)が含まれる。企業によっては、科目ごとに金額を表示していることもあれば、総額で表示していることもある。inventory turnover ratio(棚卸資産回転率)が高い企業は、原材料の仕入れから販売までの日数が短く、資金効率が高い。一方、在庫を切らしているために、販売損失がある可能性もある。売上原価を棚卸資産の期中平均で割って求めるが、売上原価のかわりにsales(売上)を使うこともある。
<計算式>
cost of goods sold(売上原価)/average inventory(棚卸資産の期中平均)
=inventory turnover ratio(棚卸資産回転率)
企業分析というと、financial statements(財務諸表)の分析を中心に考えがちだが、非財務的な要素も侮れない。これをqualitative analysis(定性分析)という。一方、財務の分析は、quantitative analysis(定量分析)という。定量分析と定性分析を両方から分析することを総合分析という。
企業のefficiency(効率性)を判断する指標。payment periodともいう。欧米では、accounts payable(買掛金)は、バランスシートの数字をそのまま用いる。しかし、日本では、月末や期末に買掛金の支払いが集中する会社もあり、正確を期すために期中平均などを使うこともある。
<計算式>
accoounts payable(買掛金) / cost of goods sold(売上原価) × 365=days payable outstanding(買掛金支払日数)
固定比率は、純資産が固定資産にどれだけ投じられているかを見る指標である。低いほど良く、日本では100%が一般的な目安とされている。これに対して、欧米ではpercentage(パーセンテージ)ではなくtimes(回転率)で表現されていることもある。また、一般的な目安も75%または0.75と考えられている。
<計算式>
fixed assets(固定資産)/ net worth(純資産)=fixed assets to net worth ratio(固定比率)
negative net worth(債務超過)は、企業の財政状態の悪化を示す代表的な兆候である。deficit net worthともいう。債務超過の状態が2年以上も続けば、倒産の可能性が高くなる。通常、銀行は債務超過の企業に融資しない。また、一般の事業会社でも、債務超過の会社に与信することは多くない。
quantitative analysis(定量分析)は別名、financial ratio analysis(財務比率分析)ともいう。企業のfinancial conditions(財務状態)を、solvency(安全性)、efficiency(効率性)、profitability(収益性)、growth(成長性)、productivity(生産性)などさまざまな観点から分析する。
liquid assets(当座資産)は、cash(現金)、accounts receivable(売掛金)、notes receivable(受取手形)、marketable securities(有価証券)のこと。current assets(流動資産)の中でも、より現金性の高い資産を指す。特に、inventory(棚卸資産)が含まれていないことが大きな違いといえる。なお、欧米では、受取手形はほとんど使用されていないので、計算式上で書かれていないことも多い。
<計算式>
liquid assets(当座資産)/current liabilities(流動負債)=quick ratio(当座比率)
ROE(自己資本利益率)は収益性を図る代表的な指標で、主に投資目的で企業分析をする際に使われる。企業が自己資本をどれだけ有効に活用して、利益を生み出したかを見ている。株主の視点から見ると、自分たちが投資したお金をどれだけ有効に活用して、企業が利益を上げているのかを判断する基準となる。海外では、業種によっても異なるが、10%~20%が良い企業の条件といわれる。日本の場合、上場企業の平均でも8%前後である。
<計算式>
net profit(純利益)/equity(自己資本)=ROE(自己資本利益率)
working capital(運転資本)は、企業の短期的な支払能力を測る指標として使われている。balance sheet(貸借対照表)のcurrent assets(流動資産)からcurrent liabilities(流動負債)を差し引いて求める。
credit insurance(取引信用保険)は大きく国内取引向け、海外取引向けと分けられている。海外取引向けの保険では、大きく2種類の取引信用保険がある。一つは、独立行政法人の日本貿易保険(NEXI)が提供する貿易保険。もう一つは、民間の保険会社が提供する輸出取引信用保険である。
ROA(総資産利益率)は収益性を測る指標で、主に投資目的で企業分析をする際に使われる。企業が総資産をどれだけ有効に活用して、利益を生み出したかを見ている。業種によっても異なるが、5%が一つの目安になる。
<計算式>
net profit(純利益)/ total assets(総資産)=ROA(総資産利益率)
total liabilities to net worth ratio(負債比率)は、企業の安全性を分析する代表的な指標である。比率は低いほど安全性が高く、比率が高くなるほど、安全性は低くなる。業種によって差はあるが、一般的な目安は150%以下である。
<計算式>
total liabilities(総負債)/net worth(純資産)=total liabilities to net worth ratio(負債比率)
オープンアカウントとは、売掛での決済条件のことである。請求書を発行して、支払期日までに支払いをしてもらう決済条件の総称。日本では、期日現金などともいう。日本国内では、支払いはほとんど銀行振込で行われるが、米国では小切手による決済が多い。日本と違って、銀行で口座を開設すると、checking account(当座口座)になる。同時に小切手帳を渡されて、簡単に小切手を切ることができるようになる。
このサービスを理解するには、米国の決済事情を知っておく必要がある。米国では、check(小切手)による決済が個人や企業において主流である。米国といえば、クレジットカードを思い浮かべる人も多いが、クレジットカードの支払いも、最後は小切手で行うのだ。米国のスーパーマーケットに行けば、レジに並んでいる主婦らしき女性が、小切手帳を取り出してサインしているところをよく見かける。
日本では、中小企業が銀行から融資を受ける場合、必ず連帯保証を求められる。日本ほど前提条件にはなっていない国が多いものの、海外でも同じ状況である。特に、創業時や設立間もない会社の場合、経営者の個人保証を求められることが多い。
invoiceは「送り状」と訳されることも多い。納品書と請求書の役割を兼ねているからだ。これは日本と米国では、請求書システムが異なることに起因する。日本ではcycle paymentといい、請求に締め日制度を採用している。「月末締めの翌月末払い」などである。これに対して、米国はnetといい、納品と請求を同時に行い、その日から決められた日数がdue date(支払期日)となる。
account statement(取引先一覧)はstatement of accountとも呼ばれる。顧客ごとに作成され、取引の履歴が記載されたものである。形式はさまざまである。自社で取引内容を記録することはもちろん、顧客との間で債権債務を確認するツールとしても使われる。初期の支払遅延が発生した段階で、リマインダー代わりに活用されることもある。
延滞とは、支払期日に遅れることだが、数日程度の遅れではなく、30日以上の遅延先を指す場合もある。また、due date(支払期日)という単語から、overdue/pastdue(期日を過ぎた、遅延の)という言い方もする。
日本の銀行融資、特に中小企業向けは担保付であることが多い。それに対して、欧米では、無担保融資も珍しくない。また日本では、中小企業への融資では、経営者の連帯保証がほぼ前提条件となっている。しかし欧米では中小企業に対する無担保融資でも、必ずしもpersonal guarantee(個人保証)も取るとは限らない。経営者の個人の信用や事業の収益性や将来性を判断して、無担保で融資をする。
売掛金年齢表は、与信管理の基本的なツールであり、財務部門が作成することが多い。単にaging reportともいう。一般的にはcurrent(支払期日前)、1-30 days past due(1~30日遅延)、31-60 days past due(31~60日遅延)、61-90 days past due(61~90日遅延)、90+days past due(91日以上遅延)というように分類される。遅延が多い企業では、91日以上もさらに、91~120日、121~150日と分類することもある。
deteriorate(悪化する)とは、品質、価値、効率が悪くなること。与信管理では、credit deterioration(信用悪化)などという表現が使われる。企業のfinancial conditions(財務状態)が悪化したり、credit rating(信用格付け)が低下したりするなど、credit risk(信用リスク)が高まることを示す。impaired credit(傷ついた信用)という表現もある。
outstanding invoices、unpaid invoices、overdue invoices、past due invoicesなど類似表現があり、混乱する人も多い。確かに日本語では、全て未払請求書と訳せる。しかしその意味は大きく異なる。outstanding invoicesとunpaid invoicesは同義語で、まだ支払いがすんでいない請求書である。未払いだからといって、遅延や滞留を意味しているとは限らない。一方、overdue invoices、past due invoicesは同義語であり、due(支払期日)を過ぎた請求書ということになる。未払請求書だが、正確には「支払期日を過ぎた未払請求書」ということになる。
※出典:「海外取引でよく使われる与信管理の英語」(牧野和彦著、IBCパブリッシング刊)
海外取引における与信管理や債権回収業務に頻出する英単語の意味を、その背景にある海外の商習慣や法規制にも触れながら解説しています。
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