前回記事(中国企業の信用調査報告書にもとづく、自社格付け2)では、中国企業の組織形態から、それらがもつ有限・無限の責任別と、想定しうる規模感などについて整理してみました。
今回は、出資者の法人、個人の別によって示唆されるリスクについてまとめてみたいと思います。
前回記事(中国企業の信用調査報告書にもとづく、自社格付け2)では、中国企業の組織形態から、それらがもつ有限・無限の責任別と、想定しうる規模感などについて整理してみました。
今回は、出資者の法人、個人の別によって示唆されるリスクについてまとめてみたいと思います。
日本の企業については、商業登記に株主を記載する必要はなく、株主情報は当該企業からの申告によって信用調査報告書などのデータに収録されています。
弊社においても、税務申告書のコピーを被調査先企業から共有いただく事もあり、そうした場合には株主情報が正しい事の裏付けができます。
そうでない場合、上場企業以外の株主情報について、本当に正しいかどうかを確認するすべはありません。
他方、中国企業については、株主情報は登記事項になっており、商業登記を確認する事によりそれらの顔ぶれをチェックすることができます。
資本金の払込みの状況や、株主情報の変更履歴なども追えるので、資本背景を確認するには充分な情報が揃っています。
また電算化がかなり進んでおり、APIを活用してそれらの情報が簡単に閲覧できるように整えいているサービスも数多く存在しているのです。
一般的に個人が出資する会社は、業績悪化などの必要時に増資できるか否か、その個人の懐事情に大きく依存する事となります。
方や法人が株主である場合には、(その法人の業績が悪化していると元も子もないですが)個人よりも資金力のあるケースが多く、また「親会社支援」という解釈が成り立つとおり、グループ会社としてサポートが得られることも通例です。
概して、個人出資よりも法人出資の方が安定性は高いと言えます。
では、法人により100%の出資を得ている企業があり、株主である出資者が個人により資金拠出されている場合はどうでしょうか。
振り出しに戻りますが、この場合も結局はその個人の資金力に影響されることになり、より詳細な分析が求められる事となります。
「中国アドバンスレポート」では、その個人株主について名寄せを行い、他に出資している会社の一覧も報告されてきます。
たとえば今回の取引先が個人出資の会社で、資本金が10万元しか払い込まれていないケースでも、同じ個人が出資している会社の中に1億元、10億元など相応の規模の資本金をもつ会社が含まれていれば、相当に資金力がある個人による出資だと理解できます。
法人である場合、概して個人出資によって出資されている企業よりも安定性が高いというのは説明の通りですが、その出資している法人(便宜上親会社とします)がどんな会社なのかも確認する必要があります。
「中国アドバンスレポート」では、親会社についても登記番号、設立年月、資本金、事業内容の情報が報告されますので、おおよその規模感を掴むことができます。
犯罪収益移転防止法に始まり、不良なルートへの資金流出を禁じる法規制はあまたあり、上で例をあげたとおり、取引対象企業に対して資金を入れている会社(親会社)に資金を入れている法人、または個人は誰なのかを確認する事が求められています。
いわゆる、究極受益者(UBO)の特定です。
「中国アドバンスレポート」では、出資者が中国法人、自然人(個人)である場合は、究極受益者(UBO)まで資本構造を追いかけ、特定のうえで報告しています。
もし外国の法人または個人である場合には、遡れるのはそこまでになります。
具体的には、中村商事という日本企業が中村太郎によって出資を得ていたとします。この中村商事の中国現法である中国中村商会有限公司のUBOとしては、中村太郎ではなく中村商事が報告されます。
このように出資背景の階層分析を続けていくと、UBOが中国当局であるケースがあります。
単純に投資を行うような行政当局であればよいのですが、ハイテク産業や軍事産業を取り仕切るような機関がUBOであった場合には、注意が必要です。
またUBOが個人であった場合にも、「あぁ、富裕層が投資しているんだな」と安心してはいけません。
よく「コンプライアンスチェック」といわれるこの潜在リスクについては、次回のブログ触れたいと思います。
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