Confirmed L/Cの開設はバイヤーの信用力が重要
Confirmed L/C(確認信用状)
貿易取引において万全であると考えられていたL/Cにも、次のようないくつかの弱点が存在する。
- バイヤー、輸出者双方に生じるLC発行や現金化のコスト
- 煩雑な事務処理
- L/C開設銀行の倒産
第一は、発行に伴う費用である。L/Cを発行する際に、バイヤーは発行費用を銀行に支払う。
また、L/Cを受け取った輸出者も銀行にL/Cをもち込み、現金化するのに通知費用を支払わなくてはならない。事務処理も煩雑である。
加えて L/Cの最大の問題点は、銀行が倒産した場合の支払いに対する保証がないという点だ。
いくら銀行の信用力が高いとはいえ、発展途上国など取引相手国のカントリーリスクが高い場合にはつねに倒産のリスクにさらされているといっても過言ではない。
発行銀行が破たんすれば、支払いが保証されなくなる可能性もある。
こうしたリスクを回避するためには、 Confirmed L/C (確認信用状) と呼ばれる決済手段を用いることだ。
L/Cの発行銀行の信用力が低い場合は、米国の大手銀行など格付けが高く、国際的に信用力の高い他の銀行が、発行銀行が発行したL/Cを二重に保証する。
これをConfirm (確認)と呼び、確認する銀行を確認銀行、確認された信用状を確認信用状という。
しかし、バイヤーの信用力が高くないと、確認信用状の開設はできない。
また 、開設費用や時間も当然ながら、通常のL/Cよりかかるという問題点がある。
さらには、日本の輸出企業を取り巻く経営環境として、中国をはじめとするアジア企業との熾烈な競争が、ここ数年で顕在化してきた。
品質面で遜色がなければ、価格面や支払条件での優位性のある企業と取引をするのは、ビジネスの原理である。
こうした理由で、海外取引の決済条件に前払いや後払いの送金取引や、後述する D/P、D/Aなどの荷為替取引など、L/C以外の選択肢を採用する日本企業も増えている。
前払いの送金取引を除き、必然的に輸出者のリスクはL/C取引と比べて増加することになる。したがって、リスクを管理するために、海外取引の与信管理を強化しようという日本企業が増加しているのが、現在の状況である。
D/P(支払渡し/支払時書類渡し)とD/A(引受渡し/引受時書類渡し)
この二つは、信用状なしの荷為替手形取引である。
荷為替手形による支払条件には、Documents Against Payment (D/P、支払渡し/支払時書類渡し)と Documents Against Acceptance (D/A、引受渡し/引受時書類渡し)がある。
両者ともに、荷為替手形の回収を条件に出荷をする方法である。
L/ Cを開設する費用と手間をバイヤーが嫌がる場合などに、この支払方法が使われる。
L/Cと違い、第三者の支払保証はなく、国際取引での“ 現金取引"のようなものだ。
D/Pとは、手形代金の支払いと引換えに書類を渡すことを条件に、商品を出荷する方法である。
回収銀行は通常、手形代金の支払いを受領してから書類をバイヤーに渡すので、それまでは、積荷は輸出者の管理下にある。
D/Aは、手形の引受けに対して書類を渡す支払条件である。
バイヤーは手形の期日までに支払う約束をすることで、書類を受け取って、商品を受領できる。
※出典:「海外取引の与信管理と債権回収の実務」(牧野和彦著、日本実業出版社刊)