日本の常識は世界の非常識?
日本の常識は世界の非常識とよくいわれるが、与信管理にもこれはあてはまる。
主要な相違点は、企業間決済における約束手形の普及の有無である。
日本では、企業間決済の半分以上を手形決済が占めているといわれるが近年減少傾向にある。
それは、手形取引がさまざまな理由で敬遠されているからである。
代表的な理由は、手形に貼る印紙代である。支払手形ではなく、買掛金を振込みで処理すれば、振込手数料だけで済む。
いずれにせよ、手形決済の最大の特徴は不渡り制度である。
日本では手形の支払期日に決済できないと不渡りとなり、大変な信用不安を引き起こす。これを6か月以内に2回行うと、銀行取引停止となり、事実上の倒産となる。
たとえ一度の不渡りでも信用不安を引き起こして、倒産の引き金になることも珍しくない。
ところが海外において、約束手形はほとんど使われていない。
また手形や小切手の不渡り制度もない国がほとんどである。その代わりに、オープンアカウントと呼ばれる期日現金の取引が主流を占めている。
つまり請求書を発行して支払期日までに支払ってもらう決済条件である。
海外で主流なオープンアカウントのメリット
このオープンアカウントには、事実上、期日遅れに対するペナルティがない。
もちろん、当事者間では契約書に支払い遅延に関する遅延金利や損害賠償の定めが記載されているだろう。
しかし、この規定を適用して、顧客に対し数日程度の支払い遅延に対する金利を請求している企業はほとんどないはずだ。
期日通りに払っても、遅延して払っても大差はないのである。
だとしたら、遅く支払ったほうが得だと考えるのが、海外企業の考え方である。
海外では、日本企業のように支払期日を厳格に捉えていない企業が多いということである。
もちろん、すべての企業がそうとは限らない。
海外企業の経理担当者は、訴えられずにいかに支払いを遅らせることができるかが、腕の見せどころだといわれる所以である。