Arbitration(仲裁)は、ADRの一種
Arbitration(仲裁)は、ADR: Alternative Dispute Resolution(裁判外紛争処理)の一種である。
契約当事者間で、事前に紛争解決手段を仲裁にすることを合意しておき、契約書に仲裁条項を盛り込んでおく。
紛争が生じた場合に、仲裁機関に仲裁を申し立てる。
Arbitrators(仲裁人)によって下されたAward(仲裁判断)には、国際的な強制力が与えられている。
例えば、日本企業が、日本商事仲裁協会で出された仲裁判断を元に、中国企業の中国国内での資産に強制執行をかけることが可能になる。
これが、裁判による確定判決だとこうはいかない。
日本の裁判所で出された確定判決を元に、中国企業の中国国内での資産に強制執行をかけることはできない。
また、始めから中国で裁判を起こし勝訴する必要がある。その逆もまた然りである。
仲裁の利点はいくつかある。
(1)仲裁人を選べる
裁判では、基本的に裁判官を選ぶことはできない。これに対して、仲裁では、当事者が仲裁人を選定することができる。
仲裁人は、通常3人とすることが多い。
偶数だと仲裁判断は分かれた場合に、多数決ができないからだ。1人だと心もとないし、自社が仲裁人を選べるとは限らない。
3人ならば、日本企業が1人、中国企業1人、最後の1人は話し合いで任命することができる。
もちろん、5名や7名にすることもできるが、その分費用がかさむ。
仲裁人に対する報酬は、人数に応じて増加するからだ。
(2)1審制のため時間と費用が節約できる
日本や米国では、裁判は3審制、中国では2審制である。これに対して、仲裁は一度しか審議をしない。
控訴や上訴がなく、審議期間も短いために、時間と費用が節約できるわけだ。
反面、自社に有利な仲裁判断を得るチャンスは一度しかないというリスクもある。
(3)非公開のため企業秘密を維持できる
一般に公開される裁判と違い、仲裁は基本的に非公開で行われる。
このため、ライバル企業に知られたくない営業上の秘密や知的財産権に関する紛争解決に向いていると言われる。
この様に利点のある仲裁だが、問題となるのが、仲裁機関と仲裁地の選定である。
日本企業は、日本商事仲裁協会を仲裁機関にして東京などで行いたいと主張する。
一方、海外企業も同じように自国の仲裁機関で行いたいと主張することが多い。
これに対する妥協策としては、被告地主義を取ることである。
つまり、日本企業が米国企業を訴える場合は、アメリカ仲裁協会を仲裁機関とする。
反対に、米国企業が日本企業を訴える場合は、日本商事仲裁協会を活用することになる。
こうすれば、当事者双方が互いにメリット、デメリットを持つことになる。