海外与信管理での取引先調査
日本企業が陥りやすい海外取引の過ちには、「取引先を調査しない」というものがある。
無論、すべての取引先を調査しないわけではない。
とくに無名な未上場の新規先で実績もなければ、警戒するので取引先を調査する。
しかしそこに、「紹介者」が入ってくると事情が違ってくる。
有力な取引先から紹介を受けた、地元の政治家や有力者から紹介を受けた、という経緯があると、それだけで相手を信用してしまい、与信してしまう。
また意外に多いのが、経営者や取締役の紹介である。
社内の与信管理規定では与信対象とならない取引先でも、社長の「この会社は信用できるから大丈夫」などの鶴の一声で特別扱いになってしまうことが良くある。
その結果、十分な調査や審査もせずに取引を開始してしまい、後日、支払遅延などのトラブルになる。
紹介を受けたということと調査をすることは別次元の話である。
紹介の有無にかかわらず、取引先は規定に従い調査をするべきだ。
また新規与信時に調査をしたきり、一度も定期調査をしない企業がある。
取引先の信用度に応じてランク分けや格付けをして、それに従い定期調査の頻度を変えることは大切である。
しかしいくら有力企業であっても、5年も10年も調査をしなくていいわけではない。
とくに海外の企業は情報が入手しにくい側面があるため、有力企業でも2~3年に一度は定期調査をすべきであろう。
人間の体と同じで、定期健診で思わぬ病気が発見されることもある。
こうした地道な活動が、取引先の経営不振の早期発見につながっていくのだ。