マズローの欲求の5段階
債務者の心理について触れるとき、私は著名心理学者の「マズローの欲求の5段階」をよく引き合いに出す。
人間の欲求には段階があり、低次元の欲求が満たされないと、高次元の欲求が出現しないという説である。
5段階の欲求は以下の通り。
- 第1段階 生理的欲求
- 第2段階 安全の欲求
- 第3段階 親和の欲求
- 第4段階 自我の欲求
- 第5段階 自己実現の欲求
「生理的欲求」とは人間が生きてゆくために欠かすことのできない食欲、睡眠欲などの根源的な欲求を指す。
「安全の欲求」は安全に暮らしたい、お金や物が欲しいという欲求である。
「親和の欲求」とは「所属の欲求」とも言われ、何かの集団に帰属していたいという社会的生活に対する欲求を指す。
「自我の欲求」とは自分の属する集団から評価されたいという欲求で、「承認の欲求」ともいう。
「自己実現の欲求」とは自分に与えられた能力を最大限に発揮したい、自分を人間的に成長させたいという最も高次元の欲求である。
この欲求の5段階は、企業や債務者にも当てはまる。
会社の経営が厳しくなってくると経営者の欲求レベルはどんどん低下し、最後は自分が何とか生きていればよいということになる。
低い次元の欲求に甘んじている債務者からの回収は極めて難しい。
いま交渉している相手の欲求が、どのレベルにあるのかを常に意識して対応することが大切である。