倒産の種類を見極めることが先決
海外の取引先が倒産したら、まずは、倒産の種類を見極めることである。
法的整理なのか、私的整理なのかで、打つ手は違ってくる。
一般的に、先進国ほど法的整理の比率が高い。
米国や日本は7割を超えているのに対して、中国やアジアなどの国々ではほとんどが5割以下、国によっては1割にも満たない国もあろう。
法的整理の場合、大口債権者でもない限り、一般債権者としてできることは限られている。
管財人から送付されてくる債権届出書を提出することぐらいである。
実際に配当があるかどうかは分からないが、債権届出を済ましておかないと、配当はない。
債権届出について、公証や大使館での認証などは必要ないケースがほとんどである。
多くの場合は、初めから債権届出書に債権額が印刷されているので、金額が正しければ、しかるべき人が、署名をすれば良いだけである。
金額が違う場合は、正しい金額を記載して、契約書など債権額を証明できる書類を添付して、返送すればよい。
遅延利息も請求することを忘れてはならない。元本に利息を加えた債権の合計金額が大きくなることで、回収額も増えることが多いからだ。
海外の管財人は事務処理が雑なので、債権者なのに、債権届出書が送られてこないこともある。
その場合には、CSの企業情報レポートなどで管財人を調査して、こちらから連絡を取る。
管財人が分からない場合は、債務者に直接聞くか、法的整理を申請した裁判所に連絡をとれば教えてくれるはずだ。
裁判所が関与する法的整理と違い、私的整理の場合、債権回収は早い者勝ちである。
まずは、倒産の事実を確認することが重要である。倒産とは名ばかりで、実際には細々と業務を続けているケースなどもある。
債務者と交渉をして回収することが基本だが、緊急を要する場合には自社製品の引き揚げを直ちに実行しなければならない。
ここで気にしなくてはならないのが、詐害行為や取引の否認ではなく、窃盗罪である。
詐害行為や取引の否認は民事だが、窃盗は刑事であるため、最悪の場合、当局に担当者が拘留される可能性もある。
また、倒産するような債務者、しかも私的整理の場合、詐害行為や否認権を追及するケースは極めてまれだ。
各国の法律による違いもあるが、基本的には相手側の承諾を取ることが前提になる。
このあたりは国内で行う自社製品の引き揚げ以上に気を使うべきだ。特に中国では要注意である。
交渉による回収、自社製品の引き揚げができない場合は、あきらめるのが賢明であろう。
無論、訴訟を起こして債務名義を取得して、債務者の財産を強制執行することも可能だが、対象となる資産がないことがほとんどだ。
めぼしい資産がない企業でも、業務を継続していれば売掛金は発生するから、それを差し押さえるのが、常套手段だが、既に銀行や現地の仕入れ先に先を越されていることも多い。
あるいは、銀行口座の差し押さえもよく行われるが、これも先を越されている可能性が高い。
倒産を知ってから訴訟を起こしていては、とても現地の債権者には勝てない。
そういう意味では、平時から、強制執行認諾の文言付き公正証書や債権譲渡通知の準備をしておき、有事に備えることが大切である。
★この内容をより詳しく知りたい方はこちらから⇒「 倒産がわかったときに取るべき7つの行動」
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